『時計のない世界』から出ようと道を探す、代表さんと鯖目。
その後ろをついてくる影がありました。
少年の名前は空冶。
空冶は空が破れる瞬間、逃亡を始めるふたりの姿を見ていました。
空冶は彼らをずっと追いかけてきたのです。
空冶も代表さんもといコールと同じ、
裏社会で生きていました。
コールと違ったのは、
空冶は組織に属したりせず、
自分たちで居場所を作っていたことです。
空冶にとっては、
今日の食べ物と寝る場所と、
それらを求める仲間が何より大切でした。
しかし、崩れゆく世界ではそんなことも
言っていられません。
空冶は仲間だった子供たちを皆置いてきたのです。
生き延びるための選択でした。
代表さんの髪が短くなったのは、この頃でした。
といっても、彼が「代表さん」と呼ばれるようになるのは、
もう少しだけあとのことです。
じゃんけんで負けたので、看板を持たされている鯖目。
代表さんと鯖目、それに空冶は、
『時計のない世界』を出てから、
いくつかの世界を旅しました。
大変だったのはお金です。
何しろ世界が変わればいくら持っていても無価値です。
さらに彼らは組織に飼われていた殺し屋と、
地上の常識に疎い空生まれと、
略奪によって生きてきた孤児。
ありつける仕事がかなり限られました。
さて、『時計のない世界』にもじゃんけんはありました。
しかし鯖目は空生まれだったせいか、はたまた友達が少なかったせいか、
じゃんけんを知らなかったようです。